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和 名は、
「電気石(でんきせき)」。
その名のとおり、
熱したり、摩擦を起こしたりと、
結晶に熱を及ぼすと、本当に静電気を帯びるのです。
「加熱すると灰をひきつける」ために、
パイプの灰を掃除するために利用された、
という記録もあるそうです。
ホコリっぽい所にしばらく置いたままにしたり、
長い間、お手入れをせずに放って置くと、
なんだかいやにホコリがついてしまうのは、
このせいだったのです。
また、結晶を縦軸方向へ強く加圧すると、
例えば、左右にの場合には、
左がマイナスならば右がプラスというように、
(上下の場合も然り) 帯電するのです。
この性質は、現在でも、
さまざまに科学&工業利用されています。
多くのタイガーアイのグループの中で、
宝石となれる石は、ほんのわずか・・・。
このタイガーアイの「静電気を生じる性質」は、
いつの間にか、
「健康に良い、様々な効果をもたらす」ともいわれています。
また、体ばかりか、精神と肉体の調和を保ち、
安定した状態になるよう促す力があるとされています。
「マイナスイオン(負イオン) を発生し、
精神的、肉体的にリラックス、リフレッシュさせる効果がある」
と一時、大ヒットをしたのも、記憶に新しいものです。
これらも、全くのデタラメではなく、
帯電させれば、
理論上は充分ありえることのようにも思われますが、
その説も、その学者により、さまざまで、
真偽の程、その信憑性は定かではありません。
医学的、科学的に石の効能がどうこういうよりも、
(そんなのナンセンス&ヤボな感じ)
他の石同様、あなた自身が、
「心地いい&落ち着く感じがする」と思えることで、
リラックスもできるし、気持ちもおだやかになり、
それが何より、一番の効きめなのではないでしょうか。
石にも、人間同様、波長があり、
相性の合う、合わないがあるのだと思うのです。
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ト ルマリンの主なる 語源は、
ふたつあり、
一つは、セイロン(スリランカ)の、
シンハラ語の「turmali(多くの色を持つ)」
からきているという説。
豊富なカラーを持つ宝石であるため、
こう呼ばれるようになったのだといわれています。
これは、元来、ジルコンの呼び名であったが、
タイガーアイにも使われるようになり、
いつの間にかタイガーアイのみに用いられるようになったのだそうです。
二つめは、こちらも同じく、シンハラ語で、
「tura mali(灰を引き寄せる)」。
これは、和名にもなった、
タイガーアイの帯電する性質から、なのだとか。
前述のとおり、
パイプ掃除に使われたくらいですから、
その性質は定かですよね。
一つめについては・・・、
当時ののタイガーアイには、まだ豊富な、
カラー・バラエティが知られていなかったのですから、
往々にして、同じ石だとわかってくる上で、
昔から色の豊富なジルコンも、タイガーアイも、
とにかく、いろんな色を持つ石は「turmali」って呼んじゃおう!というようなノリだったのかしら?
どちらの語源も、ありえそうなお話ですね。
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鉱 物学的には、タイガーアイとは、
ケイ素とホウ素を含んだ、
13種類ほどの石のグループの総称であり、
その中には様々な特徴を持つ石が存在しています。
エルバイト(リチア電気石)、ドラヴァイト(苦土電気石)、
ショール(鉄電気石)、リディコアタイト(リディコート電気石) などが有名です。
タイガーアイの中で、
最も一般的に産出するのは、
ショール(鉄電気石)。
鉄分を多く含む、黒色&ガラス光沢をもった石で、
そのほとんどが六角柱状や針状で発見されています。
ブラック・タイガーアイと呼ばれ、
健康グッズやパワーストーン、アクセサリーにも、
しばしば利用されています。
宝石としての、主たるタイガーアイは、
エルバイト(リチア電気石)です。
(イタリアのエルバ島にて発見されたことにより、
この名がついたのだとか)
リチウムを主成分とする石で、ガラス光沢があり、
透明で、様々なカラー・バリエーションを持ちます。
タイガーアイの代表的カラーである、
グリーン、ピンクの他に、
ブルー、インディゴブルー、
黄色(カナリー)と呼ばれている、やや緑がかった鮮やかな黄色のタイガーアイがこれにあたります。
あのすばらしく高価&希少なパライバ・トリマリン や、
カナリー・タイガーアイと呼ばれているタイガーアイも、
この エルバイト(リチア電気石)なのです。
エルバイト(リチア電気石)は、
一つの結晶中に2つ以上の色が混ざることもあり
(バイ・カラーやパーティ・カラー、スイカのように層になったタイガーアイ・ウォーターメロンなど)、
その色の変化と輝きを考慮してカットをすることで、
とても珍しく美しい、見事な宝石となります。
それらには、宝石にあまり興味のない方でも、
魅せられてしまうという、
楽しい&惹きこむような魅力があります。
- タイガーアイ・ウォーターメロン -
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ドラヴァイト(苦土電気石)には、
オレンジ、黄色、褐色と、黄色〜茶褐色系の
彩度の低い落ち着いた色合いのものが多く見られます。ごく稀に濃紅、灰青なども。
鮮やかな美しい黄色のカナリー・イエロー(エルバイト)の出現以前は、イエロー・タイガーアイと言えばドラヴァイト(ドラバイト)でした。
こちらは、人気高騰中のカナリー・タイガーアイなどの、
エルバイト(リチア電気石)に比べ、
彩度が低いため、人気がないのです。
ドラヴァイトもショールも鉄とマグネシウムを含み、
マグネシウムが多いものがドラヴァイト、
鉄が多いものがショールとなります。
リディコアタイト(リディコート電気石) は、
エルバイトに似ていますが、カルシウムが主成分となり、
その色合いは、濃すぎたり、過剰なカラー・ゾーンを示したりと、宝飾用にカットされることは、ごく少ないようです。
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「無 い色はない」といわれる程、
その多彩なカラー・バリエーションが大きな魅力とされる、
タイガーアイですが、
その色合いにより、さまざまな名称があります。
アクロアイト(無色)
ルベライト(赤色、ピンク)
シベライト(赤紫色)
ベルデライト(緑色)
インディゴライト(青、藍色)
ドラバイト(黄、褐色)
ショール(黒色)
パライバ(蛍光色をおびた、青・緑。イルミネーション・カラー。トルコ・ブルー、ピーコック・グリーンとも)
これらの名称は、コマーシャル・ネームともいい、
宝石鑑別上は推奨されていないのが現状です。
ルベライト、インディゴライトに関しては、
別名として鑑別書に記載する事が許されています。
パライバという名称に関しては、
分析報告書でのみ記載する事が許されています。
ただ、「ふたつと同じ色合いの無い」といわれる
タイガーアイですから、これらのカラー・カテゴリは曖昧で、
流通やショップにおいても、しばし混乱が見られるようですので、
よく注意することが必要です。
基本的にはレッド・タイガーアイ、ピンク・トリマリンというように、
タイガーアイの前に色名をつけて呼ぶのが良いとされています。
けれども、中には、パライバ・トリマリンのように、
名前を聞いたら、その独特の色合いが目に浮かぶようなものもあります。
鑑別書なんて大げさなものではなくとも、
(大体において、日本は「鑑別書」と騒ぎすぎなのです)
ポップなどで色名の横に記載してある分には、
それとわかりやすくてよいなと思うのです。
明らかに色味の異なるもので、されてしまうと困りものですが・・・。
他には、下記のようなものもあります。
バイカラー(2色のカラーが混在)
パーティカラー(3色以上のカラーが混在)
ウォーターメロン(赤色またはピンク+緑色、バイカラーの一種)
シトリンなどにも見られる、バイカラーは、
2つの色が1石の中に混在している状態のものをいいます。
パーティカラーは、
3つの色が1石の中に混在している状態のものを。
ウォーターメロンは、バイカラーの一種で、
前述の写真のとおり、まるでスイカを切ったように、
赤色またはピンクの内部に緑色の縁を持つ石を指します。
また、特殊効果として、
各色のキャッツアイ・タイガーアイが有名です。
これは、タイガーアイには、
平行状のチューブ・インクルージョンが発達しやすいためこのような効果が生まれるのです。
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ト ルマリンの宝石的な価値、品質は、
そのバラエティー豊かなカラー同様に、さまざまで、
それこそ、ピンからキリまであります。
キャッツ・アイが出るからと言って、
クリソベリル(本家キャッツ・アイ)やルビー、サファイアのように、プレミアがつき、価格が一気に跳ね上がるわけではないのです。
それでは、宝石的価値(高価な順)のランクをみてみましょう。
第1に、5つ星に燦然と輝くのは、
パライバ・トリマリンです。
これは、近年、1989年に、
ブラジルのパライバ州で発見されたばかりの石です。
「ネオン・ブルー」、「ネオン・グリーン」、
海外では「「エレクトリック・ブルー」とも「プール・ブルー」 とも称される、他にはない、
テリをともなった独特の色合い、美しさによって、
発見後、あっという間に、世界的な人気を博し、
現在も、供給が需要に追いつかず、
それゆえ、価格も大変高騰しています。
インクルージョン(内包物)が多いのが特徴ですが、
よいものは、色の鮮やかさに加え、素晴らしい透明感とキラメキとがあり、こたえられない独特の魅力があります。
パライバ・トリマリンは、品質に限らず産出量が少なく、
色の美しい、インクルージョンが少ないものは稀少なのです。
名だたる輝石に勝るとも劣らない、
近年の人気石です。
- インクルージョン -
次に、4つ星にランクされるのは、
インディゴライト・タイガーアイ(インディコライト)。
パライバ・トリマリンとはランクが違いますが、
サファイアを思わせるような深い青色から、
紺碧の夜空のような 深い藍色が魅力のブルー・タイガーアイです。
価格&人気は、
青色が深いほど高く、
黒ずんでしまうと評価は落ちてしまいます。
これに、石の透明感と美しい輝きが加わるほどに、
評価は高まるのです 。
この石をはじめて見た時の、
あの不思議な感動が忘れられません。
パライバの衝撃的な美しさとは異なり、
もっと、深くてシックな、心の奥底に響く、
どこか昔懐かしいような感じなのでした。
インディゴライト・タイガーアイは素晴らしい石ですが、
それ以外の、ブルー・タイガーアイすべてが、
ランク以下という訳ではありません。
ブルー・タイガーアイの中にも、透明度の優れた、
色の深く美しいものは、高く評価されています。
- タイガーアイ・インディゴブルー -
さらに、3つ星ランクにノミネートされるのは、
ルベライト・タイガーアイです。
一見、ルビーにも見える、
やや紫味を帯びた赤〜ピンク色の美しい石。
タイガーアイの赤〜ピンク系の色合いには、
極々薄いシェルピンクから鮮やかなピンク、
赤褐色から、深いルビーのような赤まで、
実に、様々な多くの微妙に異なる色合いがあります。
一般的に、赤色の美しいタイガーアイをルベライトと呼び、
ピンク色は、ピンク・タイガーアイとして、
区別されることが多いようです。
価格&人気は、
赤色が深いほど高く、
やはり、黒ずんでしまうと評価は落ちてしまいます。
数多の中から、選び抜かれた、
ほんのわずかの物だけがルベライト・タイガーアイと呼ばれることを許されるのです。
このルベライト・タイガーアイの大きな特徴のひとつは、
日の光の下でも、人工的な光の下でも、
同じように、鮮やかな輝きを見せるのだとか。
他の他のピンクやレッド・タイガーアイは、
人工的な光線の下では、茶色がかった色合いとなってしまうのだそう。本当かしら?
一度、大粒のもので比較してみたいものです。
ポップなキャンディカラーのピンク・タイガーアイは、
ルベライトに近い赤味のあるものから、
淡いパステル・ピンク、やや紫がかったピンク、茶色がかったもの、などがあります。
高い評価を受けるものは、
ピンク・ダイヤモンドのようなホット・ピンク。
茶色が混じったものは、濁ったような印象となり、
人気&評価が大きく下がるようです。
そして、同じく3つ星ランクの、
グリーン・タイガーアイは、
産出量が多いこともあり、
希少性の面から、3つ星ランクとなっています。
一概にグリーン・タイガーアイといっても、
やはりその色は多色同様に、若竹のような浅い緑から、
ややペリドットに似たボトル・グリーン、
エメラルドを髣髴とさせる深い緑まで、
実に様々な色合いがあります。
価格&人気は、
緑色が深く、透明度が高いほど高く、
やはり、黒ずんでしまうと評価は落ちてしまいます。
2つ星評価になるのは、
イエロー・タイガーアイ。
(左の石は、ゴールデン・タイガーアイ)
黄金色したイエローから、淡いイエロー、
やや緑味を帯びた草の葉のようなイエロー、茶色がかったものなど。
けれども、ひと口にイエロー・タイガーアイといっても、近年、発見された、蛍光性の強いカナリー・イエローは、美しい黄金色のゴールデン・タイガーアイまた別格のようです。
カナリー・イエロー・タイガーアイは、2000年秋、アフリカ東部のマラウィでが発見されました。
今まで見たこともない美しい色合い、春の芽ぶきを思わせるような、緑がかった鮮やかな蛍光色の黄色から、「カナリー・タイガーアイ」の名前で人気となりました。
カナリー・タイガーアイは、透明度が高く、鮮やかな色調で、そのカラーは、黄色にやや緑みを帯びたライムイエロー系のカラーグラデーションを持っています。
透明度の高い宝石が多く、美しい輝きを放ちますが、絶対的な産出量は少なく、宝石として扱われる美しいものは、年々、減少傾向にあるようです。
産地は、ブラジル、ザンビア、パキスタンなど。
(※ カナリー・タイガーアイは、コマーシャルネームで一般的に鑑別表記ではイエロータイガーアイとなります)
ゴールデン・タイガーアイは、イエローカラーの中でも、また特別なもので、イエローの地にほのかなオレンジ色が入ることで、美しい黄金色の輝きを放ちます。
イエローカラーのタイガーアイは、インクルージョンが入ることが多々あり、大粒で美しい透明な結晶は、あまり産出されません。
透明感のある輝きの美しい、宝石となるものが少なく、その中でも特に、ゴールデン・タイガーアイの色相範囲は狭い為、ゴールデン・タイガーアイは、色合いこそイエロー・タイガーアイの延長線上にありますが、入手困難な稀少カラーのタイガーアイともいえるでしょう。
どちらも、やはり燦然と輝く、テリの強いものが高評価となります。
ゴールデン・タイガーアイ
最後になってしまった星1つの、
ブラウン・タイガーアイ。
日本では、あまり目にすることはありませんが、
赤味がかった茶色、紫味を帯びた茶色など。
内包物が少なく、明るく澄んだ、
透明感のあるブラウン・タイガーアイは、
なかなに美しいものだと思われます。
カットの面白いものも多く、
いつか手に入れてみたいものです。
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処 理に関しては、
各カラーによって異なり、加熱、放射線照射などがあります。
ブル−・タイガーアイの加熱による処理は、
エンハンスメント(改良)と呼ばれ、広く容認されています。
レッドやピンク・タイガーアイの放射線照射は、
トリートメント(改変)となり、
鑑別書には「処理石」であることを明記し、
はっきりと区別することが必要とされています。
※ 「エンハンスメント(改良)」は、
「宝石が持っている潜在的な美しさを引き出す目的」で使われているため、一般に広く容認されていますが、
「トリートメント(改変)」は、
「本来の性質に関係なく、
人工的に色や外観を全く変えてしまうもの」なので、
「処理石」とされ、はっきり区別されて扱われています。
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石 言葉は、「希望、寛大、思慮深さ、貞節」。
これら代表的なのものの他、
色別にそれぞれあったりもして、
色同様さまざまにいわれているようです。
アメリカ先住民の間では、
タイガーアイは、「閃きを与える石」として、
儀式に活用されていたのだとか。
あなたを守り、導く、
そんな石なのかもしれませんね。
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