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和 名の「蛋白石」という呼び方は
中国から来たもので、
卵の白身に似ているところからとか。
なるほど。しかし、浪漫のないネーミング。
私だったら、
せめて「虹炎石」とかにするだろうなあ。
日本人は、
最もオパールを好む民族として有名ですが、
オパールほど、
民族により好みがはっきり分かれ、
歴史の中で、人気の浮き沈みの激しい宝石は
ないかもしれません。
最も人気のあった時代は、
古代ローマ。
愛と希望と力の象徴といわれていました。
さぞかし熱狂的に愛されたことでしょう。
エメラルドの次に重用されたされた石
だったようです。
ところが、一転してヨーロッパでは、
17世紀までは珍重されていましたが、
18〜19世紀にかけては、
「不幸をもたらす石」として、忌み嫌われたとか。
石にとっては、
はなはだ濡れ衣とも言える迷惑なことですよね。
けれど、オパールは、
気にせず無邪気で
変わらぬ虹色の輝きを放っていたことでしょう。
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オ パールの
「遊色効果(プレイ・オブ・カラー)」を示す変種は、
「プレシャス・オパール」と総称されています。
ボディカラー(地の色)が、
黒色から暗灰色を「ブラック・オパール」、
白色を「ホワイト・オパール」、
赤色からオレンジ色を「ファイヤー・オパール」、
ほとんど無色透明を「ウォーター・オーパール」
と呼びます。
- ファイヤー・オパール -
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「ブ ラック・オパール」は、
希少性が高く、とても高価な宝石です。
それは、『10大貴石』の中のひとつ
にも数えらてれます。
とても神秘的な輝きの石で、
最も「日本人好み」と言われていますが、
「本物の良さの解かる、
美しく年齢を重ねた大人の女性」 にのみ
似合う宝石だと、私は思われます。
品のある老婦人や老紳士が持って、
やっと しっくりくるようなそんな石なのです。
地色は、黒色から暗灰色のほかに、
暗い紺色や沈んだ黒っぽい緑など。
明らかな黒色地に、
大きく揃った「色斑(色の斑点)」が
はっきりと現れるものがすばらしいとされ、
宝石としての評価も高くなります。
その斑点も、
赤色が強いほどに、よりいっそう高価。
中でも、
カラスの濡れ羽色のように
「真っ黒な地色」の上に、
「鮮明な深紅色と緋色」の現れるものを
「レッドオンブラック」と呼び、
ここに緑やオレンジ、青が美しく混ざると、
最高級の「ブラックオパール」となります。
ただし、産出されるのは、ごく稀(まれ)なことのようです。
赤の次はオレンジが、遊色が単色になる場合は、次が黄色、紫色、緑色、青色という評価順になります。
「ブ ラック・オパール」の
宝石としての歴史は比較的新しく、
1902年にオーストラリアで発見されて以来
となります。
現在もこの石の産出は、
オーストラリアのライトニングリッジ鉱区
に限られています。
しかも、一級品の産出は、
年々減少しているとか。
その価値は、今後も上がり続けそうですね。
この「ブラック・オパール」の、
積層が薄く指輪にはならないものを、
他のオパールと接着して、
「ダブレット」、「トリプレット」
として売られることもあります。
当然、お値段は
「ブラック・オパール」よりも安いものです。
横から見ると
接着しているのが解かりますので、
オパールご購入の際は、
まず横チェックを。
なかには、プロが見てもわからないほど
精巧なものもあるとか。
一見、「ブラック・オパール」に見える、
薄く沈殿したオパール層を
母岩ともにカットした「ボルダー・オパール」
というものもあります。
こちらはこちらで、
野性味溢れるナチュラルで素敵な石なのですが、
お値段的にはオパールとは比較にもなりません。
お買い求めの際には、
両者のお取り違えのないように
よくよくご注意くださいね。
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「ホ ワイト・オパール」は、
最も昔から産出されていたオパールで、
歴史上の人々が愛し、
それにまつわるさまざまな逸話を残しました。
別名は「ライト・オパール」。
地色は、白色のほかにクリーム色、
ごくごく薄い青色。
その上に、ちらちらと虹色の「遊色効果」
が現れています。
みなさんがご存知の、
『最も一般的なオパール』
と言っても良いでしょう。
このオパールは、
多くのアンティークジュエリーにも使われています。
かの有名なアール・ヌーヴォーの代表画家
「アルフォンス・ミュシャ」が、
大女優「サラ・ベルナール」のためにデザインし、
彼女が当時最高の宝飾家「ジョルジュ・フーケ」
につくらせたというジュエリーに使われたのも
オパールでした。
ミュシャの装飾品のなかでは、
最も有名とされるこのジュエリーは、
蛇のモチーフのブレスレットと、
ダブルチェーンで結ばれたリングです。
10代の学生の頃、
美術展で偶然見たそのジュエリーには、
スネークデザインのブレスとリングの蛇の頭部に
青から緑色のオパールが
モザイクのようにちりばめられていました。
その石の美しい色合いに、
思わずうっとりして、
いつまでも見つめていたたことを今でも覚えています。
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- ブルー・オパール -
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「フ ァイヤー」および
「ウォーターオパール」は、
主産地がメキシコであることから、
「メキシコ・オパール」
と宝飾業界では呼ぶことも多いようですが、
これはあくまで「俗称」になります。
『10大貴石』の栄誉は、
「ブラック・オパール」に譲るものの、
メキシコ産のこのふたつも、
非常に魅力溢れる宝石です。
「黒いドレスの最高級の貴婦人」のような
お高いイメージの「ブラック」よりも、
私はどちらかというと、
「明るく無邪気だけれども素晴らしく印象的な」
この令嬢のような石に強く惹かれます。
いつも見かけると、
その石の魅力に思わず惹きこまれてしまい、
現実世界に戻るのに十数分を要します。
この間のジュエリーフェアでも、
その石から離れるのにひと苦労しました。
そのくらい魅力ある石なのです。
中でも、「ファイヤー・オパール」は、
もっとも華やかな宝石です。
オレンジ、赤、青の地色に、
くっきりと浮かぶ虹色の炎。
まさに「ファイヤー」の名にふさわしい、ジュエル。
深紅の発色の素晴らしいものが、
宝石として珍重されるようです。
約500年前にメキシコで発見された、
比較的新しいジュエルです。
ファイヤー・オパールには、
遊色効果(プレイ・オブ・カラー)のないものもあります。
歴史上もっとも有名な「ファイヤー」は、
ナポレオンの皇后ジョセフィーヌの所有していた
「トロイの炎上」という石。
その名の通りこの石は、無数の赤い遊色が
さながら火事のように燃えていたそうです。
さぞかしすさまじい煌きだったことでしょう。
ぜひ、見て見たかったです。
「ウ ォーター・オパール」は、
澄んだ水の中に
きらめく光の宇宙が見える石です。
その遊色はやはり素晴らしく、
いつまで見ていても見飽きることがありません。
いつか、ぜひ手に入れたい宝石です。
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と ころでみなさま、
「コモン・オパール」をご存知ですか?
オパールには遊色効果を示さない、
「コモン・オパール」と呼ばれるものがあります。
日本ではあまり馴染みはありませんでしたが、
ヨーロッパやアメリカでは、昔から、
美しい色のコモン・オパールを使った
ジュエリーが多くみられました。
他のオパールが
「カボッション・カット
(半分にした 楕円や真円のまあるいカット)」
にされることが多いのに比べ、
このコモン・オパールは、
「ブリリアント・カット」や
「ステップカット」に磨かれたりと、
カットのバリエーションも豊富なのも魅力のひとつです。
カラーは、グリーン、ピンク、ブルー、イエローなどあり、
それぞれに、「ブルー・オパール」などと石名がつきます。
ここ数年、日本でも、パワーストーンなどの世界で、
「コモン・オパール」を見かけることが多くなりました。
ジュエリーの世界では、
まだそれほど見られませんが、
じきにポピュラーになってくるものと思われます。
貝や植物など
が永い永い時間をかけて化石となり、
そこに珪酸が沈殿し、オパール化した、
「フォッシル・オパール(化石オパール)」も
コレクターには人気です。
小さな石の中に、
深い深い時間の魔法が伺えます。
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「コ モン・オパール」の魅力は、
何といっても、その不思議な色合いでしょうか。
特に、わたしが好きな
「ブルー・オパール」を例にとってみると、
ほんのり黄みかかった、
優しいペールブルーの石の中に、
まるで水の中にいるかのような、
光のゆらぎ、色のざわめきがみえるのです。
また、もう一種の「ブルー・オパール」の方には、
深い透明感を感じる、碧い石の中に、
海辺の波打ち際の白い泡のような、
美しいレースのような模様がみえます。
この不思議な色の濃淡、色や光のゆらぎ、
が「ブルー・オパール」の最大の魅力だと思うのです。
石の中に海や湖を感じ、その美しさに、
いつまで眺めていても、見飽きることがありません・・・。
- ブルー・オパール -
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「ブ ルー・オパール」の石のパワーは、
直観力を高め、アイデアが閃めき、
インスピレーションを与えてくれるのだそうです。
また、ストレスの緩和 し、
コミュニケーション能力も向上させてくれるのだとか。
大事なプレゼンの前や、結婚式の司会など、
大勢の人前に出るときなどに、
よいお守りになりそうですね。
- ブルー・オパール -
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オ パール・・・、
その姿は、
見つめていると思わず引きこまれてしまうような
蠱惑(こわく)的な 妖しい煌きの石。
オパールは、
他のジュエル(宝石)とは異なり、
ひとつひとつの石が、
それぞれに全く異なった美しい色彩を見せます。
その芸術的な輝きは、
まるで色鮮やかな「抽象画」のよう。
ひとつとして同じ色合い、配色のないオパール。
さまざな石のなかに、
貴方のお気に入りを見つけてください。
オパールの寿命は短く、
人の一生涯プラスαという説もあります。
ジュエルというよりも、
貴方だけの素敵なパートナーのようですね。
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