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○●○ エメラルド***5月の誕生石 ○●○
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(メールマガジン『月のしずく』2002.06.30号 記載)
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◆ 深 い深い森の緑、
どこまでも澄んだ、湖の底のようまな、
「エメラルド」の、深い深い、緑色。
孤高なまでに美しく、光る獣の瞳。
熱い強さを感じさせるルビーとは、また違った、
静けさの中の、強さ、美しさ、烈しさを感じさせる、
そんな石です。
* * *
緑 の石の代名詞でもあり、
ダイヤモンド、ルビー、サファイヤと並ぶ、
4大貴石のひとつ、
「エメラルド-Emerald」は、5月の誕生石。
古代に、東方の交易者によって、
ヨーロッパに伝えられたという、エメラルド。
その語源は、
サンスクリット語の、「スマラカタ(緑の貴石)」が、
古代ペルシャ語、ギリシャ語の「スマクラグドス」、
ラテン語の「スマラルダス」、
古代フランス語の「エスメラルド」を経て、
現在の、「エメラルド」に変化したといわれています。
和名は、「緑柱石(りょくちゅうせき)」。
または、「翠玉(すいぎょく)」とも。
その名の通り、
原石は、柱の形をしています(柱状結晶)。
アクワマリンと同じ、
ベリル族の代表ともいえる石です。
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和 名>
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緑柱石、翠玉 |
硬 度>
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7.5〜8(モース硬度) |
屈折率>
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1.57〜1.6 |
比 重>
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2.7 |
主産地>
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コロンビア、ブラジル、ザンビア、オーストリア、インド、
ブラジル、南アフリカ、エジプト、アメリカ合衆国、ノルウェー、
パキスタン、ジンバブエなど
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色 >
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緑 |
宝石ことば>
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幸福、幸運 |
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* * *
女 神ヴィーナスが、最も愛したという、
エメラルドの、
他を圧倒するような凄絶な美しさは、古来より、
世界各国で崇められ、大切にされてきました。
聖なる緑の石。
古代、バビロニアでは、
女神イシュタルの司る宝石とされ、
エジプトでは、
ホルス神を「エメラルドの王子」と呼んだとか。
最後の晩餐で、キリストの聖杯につかわれた、
天使ルシファー(のちに魔王になる)の冠から落ちたとされる石も、エメラルドでしたね。
使徒ヨセフが中国にかくしたという、
その聖杯は、その後、
イタリアはジェノバの聖ジョバン寺院に奉納されたと、
長い間いわれていましたが、
調べてみると、それはただのガラス杯だったとか。
では、本物はどこへ・・・?
人間達の手を逃れ、今も、中国の奥地に、
ひっそりと隠れているのでしょうか。
また、インカ帝国では、
ダチョウの卵ほどもある、
とてつもなく大きな大きなエメラルドが、
女神ウミナの、魂をあらわす石と崇められて、
その神殿は、一面、エメラルドで埋められ、エメラルド尽くしであったとか。
ぜひ、ひと目、見てみたかったです
その後、スペインの侵略により、
おびただしい数のエメラルドが略奪されましたが、
このウミナのエメラルドだけは、
どこを探しても見つからなかったのだそうです。
一説には、無知なスペイン人たちの手により、
その石の偽者本物を問うために、ダイヤモンドの時のように、鋼鉄を打ち下ろしたのだとか。
これでは、繊細なエメラルドは、ひとたまりもありません。
多くの貴重なエメラルドは、こうしてこの世を去ったのだと、
ガルシラッソの『インカ帝国史』には書かれています。
けれど、もしかしたら。。。
侵略の歴史に姿を消してしまった、
ウミナのエメラルドは、彼らの手を逃れ、未だ、
ペルーの山奥に、眠っているのかもしれません。
インドでは、ビシュヌ神のネックレスに、
大地を象徴する「エメラルド」がはめられていると、信じられており、
タイ・バンコクでは、
エメラルドでつくられたという、ブッダの仏像が、
今でも、人々に、崇められているそうです。
(翡翠製という説も・・・)
* * *
エ メラルドは、
多くの小説や童話にも登場しました。
ウミナの神殿のように、一面がエメラルドの、
エメラルド尽くしといえば、『オズの魔法使い』です。
ドローシーが目指したのは、何もかもが緑色でできている、その名も「エメラルドの都」。
それは、幼い想像をかきたてられた、
はじめての宝石。
どんなにか美しいであろう緑の都に、
思いをはせたことか。
現在、エメラルドの有名な産地でもある、
南米コロンビアの首都・ボゴダは、
エメラルドを基調にした、美しい緑の街だとか。
ポストも、街灯も、窓枠だって緑色。
現代の「エメラルドの都」といえるかもしれませんね。
三島由紀夫の『暁の寺』では、
タイの姫君に、この石「エメラルド」が贈られました。
けれど、彼女は、石のパワーにふりまわされるかのように、波乱万丈の短い人生をおくります。
美しすぎる、この宝石は、
まだ、若い姫君には、扱いきれなかったのでしょうか。
素敵に年齢を重ねた、
しわくちゃのおばあちゃまの手や、
背筋のピンとした老紳士の胸にこそ、ふさわしい、
そんな宝石だと、わたしは思います。
大きさも、ほんのぽっちりと小さなものよりも、
より大きなものこそ、その真価を発揮するこの石は、
何もかもを超越した、豊かな深みのある人にしか、
その所有をゆるさないのかもしれません。
いつか、身につけることができたら、素敵ですね。
憧れの宝石のひとつです。
* * *
比 類なき、「エメラルド」の、美しい緑色は、
「エメラルド・グリーン」という色をも、うみだしました。
それは、絵の具の色名としても用いられ、
印象派以降の、多くの画家達に愛用されてきた、
鮮やかに、冴えた緑色です。
あの有名なゴッホの『糸杉(のある麦畑)』にも、
ヴィリジアン、ウルトラマリンと共に、
「エメラルド・グリーン」が用いられています。
思えば、わたしが初めて、「絵の具箱」以外の色を購入したのも、「エメラルド・グリーン」でした。
その、他にはない、不思議な鮮やかな色合いに、
当時、小学生だったわたしは、
すいよせられ、ひと目で魅せられてしまったのです。
使う予定もないのに購入したそれは、
必要もないのに、たびたび画用紙にのせられ、彩をそえました。
何を混ぜてもつくれなかった、
不思議な宝物のような色だったのです。
* * *
エ メラルドの最も似合う女性といわれたのは、
エジプトのクレオパトラ女王。
神秘的で、エキゾチックな美女の代表ですね。
実際、当時、エジプトには、世界最古の鉱山であった、
クレオパトラ鉱山というものがあり、
良質のエメラルドを、たくさん産出していたとか。
彼女の人生を象徴するかのような、
強く、美しく、鮮やかなまでに、はかないエメラルド。
「ないものねだりをすること」を、
「キズないエメラルドを望むようなもの」
といわれるくらいですから、
エメラルドのインクルージョンは、あたりまえのことであり、
むしろ、その石の個性のようなものなのですね。
また、冷たい色(寒色)のエメラルドに、
明るいあたたかさをあたえているのが、このインクルージョンであり、
これによって、光を屈折させ、
緑色にあたたかみをプラスしているのだそうです。
最高級のものだと、
恐ろしいまでの凄みや、さえざえとした冷たさを感じるのは、
このインクルージョンが少ないせいかも知れませんね。
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エメラルドのインクルージョン(内包物)の、
最も一般的なものは、
結晶の空隙部に含まれる、自然の液体です。
これらの液体は、
カットや研磨の際に、自然と流れ出てしまいます。
その穴を埋めるために、
通常、無色のオイルや樹脂をその中に含侵しているのです。
これらの処置は、性質上必要な処理であり、
もとの状態に戻すことを目的としているので、
トリートメント(改変)ではなく、
エンハンスメント(改良)として、広く認められています。
(淡色のエメラルドに着色のオイルや樹脂を含侵したものは、トリートメント(処理石)となります)
エメラルドのほとんどに、この処置(無色の液体の含侵のエンハンスメント)がなされているので、
それを壊す恐れのある、
超音波洗浄器の使用は、絶対に禁物です!
超音波洗浄器や、洗剤は、
このせっかくの処置を、台無しにし、
入れたオイルを流出させてしまうのです。
まさか、エメラルドの超音波洗浄を、
すすめるお店があるとは思えませんが、
万が一、すすめられるようなことがあっても、しっかりとお断りしてくださいね。
そして、エメラルドは、
くれぐれも、大切にあつかってください。
運動や、家事などのときには、決して着用しないように。
優雅な時間や素敵なディナー、パーティに、
ゆったりと身につけて、楽しんでくださいね・・・。
※ 「エンハンスメント(改良)」は、
「宝石が持っている潜在的な美しさを引き出す目的」で使われているため、一般に広く容認されていますが、
「トリートメント(改変)」は、
「本来の性質に関係なく、人工的に色や外観を全く変えてしまうもの」なので、「処理石」とされ、
はっきり区別されて扱われています。
* * *
エ メラルドのひみつは、
同族の年若の妹、
アクワマリンの候でも紹介しましたが、
はじめての方のためにも、こちらでもくりかえします。
エメラルドは、「アクワマリン」と同族のベリル族で、
結晶構造に、わずかなクロムが含まれると緑色になるのです。
ベリル族には、この他に、
赤(レッド・ベリル)
黄色(イエロー・ベリル)
ピンク(モルガナイト)
薄い若草色(ヘリオドール)
無色
などがありますが、有名なのはやはりこのふたつ、
「アクワマリン」と「エメラルド」ですね。
同じベリル族とはいっても、
「アクワマリン」を含む、その他のベリルと、
「エメラルド」には、
性質に大きな違いがあります。
これは、両者が産出される、
「地質環境」によるものなのですが、
いうなれば、
「エメラルド」のみが、
過酷な環境に、身を置かれ成長する、波乱万丈人生で、
「アクワマリン」を筆頭に、その他のベリルたちは、
辛苦を知らない、無邪気な人生、といった感じでしょうか。
その結果、
「エメラルド」だけが、
結晶も小さく、多数のインクルージョンを含みます。
(インクルージョンはエメラルドの欠点であると同時に魅力ともいえる特徴なのです)
けれど、あまり苦労を知らない、
その他のベリルたちは、
比較的、傷が少なく、大きな結晶も存在するのです。
「エメラルド」の年若い妹、
「アクワマリン」に、透明度の高い大きな石が多いのも、そういった要因からなのです。
* * *
エメラルドの産地は、なんといっても、
前述の、現代の「エメラルドの都」ともいえる、
コロンビアが有名です。
コロンビアには、良質なエメラルド鉱山があり、
また、鉱山によって、その品質や特徴は異なります。
コロンビア最大の
ムゾー鉱山のものは、
柔らかな味合いのグリーンが特徴で、
チボー鉱山のものは、
透明度が高く、冴えた涼しげなグリーンが特徴。
コスクエス鉱山のものは、
淡い黄色味を帯びた印象的なグリーン。
コロンビア産のものに比べ、
ブラジルや、ザンビア産のものは、
黒味を帯びた緑色で、やや魅力に欠けてしまう。
これは、エメラルドが付着している母岩が、
黒っぽい岩の層のためだとか。
香港などで売られている、
2級品のエメラルドたちは、このザンビア産のものが多いのだそうです。
その石が気に入ったのであれば、
もちろんそれが一番で、いいのですが、
安いからといっての安易な購入は、
後でがっかりすることもあるかもしれません。
ご旅行などに行かれる方は、気をつけてくださいね。
他に産地として、
オーストリア、インド、オーストラリア、ブラジル、
南アフリカ、エジプト、アメリカ合衆国、ノルウェー、
パキスタン、ジンバブエなど。
注意したいことは、
コロンビア産が最高とはいえ、
一カラット、数百万のものもあれば、一万円以下のものまで、その品質は、さまざまだということです。
それを盲信することは、とても危険ですが、
石を判断する、ひとつの目安になさってください。
* * *
エ メラルドの美しい緑は、
緑一色のものではなく、
その中に、
ほんの少しの赤が混じっているのだとか。
特別なカラーフィルターを通すと、
天然のものは、淡いピンク色を、
合成のものは鮮赤色を示すそうです。
以前は、この方法で、
両者を見分けることが簡単だったのだそうですが、
近年では、
天然のものと全く変わらない特性の合成石が主流となったために、
安易な判断は、できません。
緑の中に混じる、ひとひらの淡いピンク。
そんな複雑な色合いが、
エメラルドの奥深い、
神秘的とも言える緑色を、創り出しているのです。
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〜エメラルドをつかったジュエリー〜
*よい石がみつかりましたので、ただいま画像&詳細ページ準備中です・・・!お楽しみに♪
( もうひとつの○●○ 5月の誕生石 ○●○)
〜ジェードをつかったジュエリー〜
*SVオリーブ・ジェード(ネフライト)<olive de olive>
ブレスレット
http://natsuki.to/catalog/S-109-1-b.htm
*K18アフリカン・ジェード(ネフライト)<lotus green>
ブレスレット&ピアス
http://natsuki.to/catalog/
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爽 やかな、5月の新緑を思わせる、
美しい緑色のエメラルドは、日本でも古くから愛されてきました。
日本人もまた、エメラルド好きな民族なのですって。
グリーン・トルマリンとは違う、
明るい鮮やかな緑色は、心をやわらげ、落ち着かせるのかもしれません。
持ち主の機知を鋭くし、
正直にさせるといわれる、エメラルド。
この石を、舌にはさむと、未来を予知できるといわれています。
眼病を治す石でもあり、
逆に、邪悪なものがこれを見つめると、視力を失うとか。
初夏を感じさせる、新緑色のエメラルド。
春の宝石。
宝石言葉は、「幸福」、「幸運」。
6月1日から7月22日の間に、
この石の夢を見ると、幸せが訪れるといわれています。
ぜひ、みなさんも、
素敵なエメラルド色の夢を、今夜は、見てくださいね。
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◆ お手入れ方法
エメラルドは、とてもデリケートな宝石です。
先にも述べたように、せっかく含浸した樹脂の流出を防ぐために、超音波洗浄器は厳禁です。
エメラルドは、衝撃に対して要注意の石です。
超音波の振動はもってのほかですが、
日常的な衝撃でさえ注意が必要です。
また、熱による乾燥にも弱いので、
火を使う料理中はもちろん外すことの他に、
熱湯や暖房器具などにも充分注意をしましょう。
除光液も厳禁です。
ヘアスプレーや、温泉もできるだけ避けてください。
身につけて汗やあぶらが付着したら、すぐに柔らかい布でやさしくく拭き取りましょう。
これが一番の手入れ方法です。 |
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◆ 保管方法
1. 他のジュエリー同様、
保管はひとつひとつ布でくるむか、
石同士がぶつかり合わないように、
小分けにして保管するのが望ましい方法です。
2. 直射日光や、
強い照明の当たる場所での保管はいけません。
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