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そ の語源は、
ラテン語で「石」を意味する「lapis」と、
古代ペルシャ語で「青、空」を意味する「Ladjevard」が
アラビア語の「Lazward(ラズワルド:天・空・青などの意でアジュールの語源)」、
さらにラテン語の「Lazurium」となり、
これが変化して、
現在の名前「Lapis Lazuli」になったとされています。
けれど、この名前に至るまで、
数多の遍歴がありました。
もっとも多く記されて、
また、現代でも誤解を招きそうな名前のひとつは、
サファイアでしょうか?
アリストテレスの弟子であり、
植物学者の祖であるギリシアのテオフラステスは、
「サファイアには黄金の斑点がある」 と書いています。
ローマの『博物誌』を著した、大プリニウスは、
「サッピールス(サファイアのラテン名)は空色で、希に紫色であり、中には黄金の点々が入っていて、それが輝く」
とその著書に書かれてます。
けれど・・・、サファイアには、
黄金の斑点など、どこにも入っておりません。
彼らが、サファイアと呼び、記していたものは、
どこからどう見ても、、
ラピスラズリのことではないでしょうか?
古代において、
サファイアとは「青い石全般」を指しておりました。
それゆえ、こうした混乱が起こったのでしょう。
サファイアの名称は随所に見られますが、
実は、ラピスラズリであった場合も多いようです。
もちろん、すべての場合がそうではありませんが。
今となっては、その文面に思いを馳せ、
様々な文献から解釈するより、
それと確かめる方法はありませんが、
いずれにしろ、
ラピスラズリが「古代から愛されてきた宝石の1つ」であったことをあらわしているようですね。
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現 代とは異なり、
宝石の価値に、「輝き」よりも「色」が重視されていた時代、
中世以前、ラピスラズリは、
現在のダイヤモンドと同等以上の価値を持っておりました。
古代アッシリアでは、
「ラピスラズリは空の完璧な美しさを持つ」
と称えれました。
古代バビロニアの文書や、
エジプトの「死者の書」にも、
ラピスラズリについて記されています。
古代エジプトでは、天空神オシリスの宝石とされ、
この石に、「スカラベ」や「ホルスの眼」を刻み、
悪霊を除く強力な護符として用いられました。
その神秘的な美しさに魅せられ、
宙を映したかのような、この石、ラピスラズリに、
人々は神の力を感じ取りました。
研磨技術の未熟な時代、
産出されたそのままで美しい、
ラピスラズリの、色鮮やかな群青色、
アトランダムに散りばめられた黄金色の斑点は、
人々を魅了し、珍重され、
彼らは、この石に、
果てしない宇宙(そら)を思い描いたことでしょう。
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数種類の鉱物が混ざり合い、生み出された、
ラピスラズリは、
ラズライト(Lazurite;青金石)、ソーダライト、アウイン、ノゼアン、方解石、黄鉄鉱などの鉱物から形成される、 青色の岩石です。
日本では、金色の黄鉄鉱を含む青い石、
青金石※(せいきんせき)とも呼ばれていますが、
実際には、青金石そのものではなく、
青金石を主成分とし、
それに似た化学組成を持つ、ソーダライト、アウイン、ノゼアン、
さらに母岩の方解石や、
不純物である黄鉄鉱が混ざった、美しい岩石なのです。
和名で青金石と命名された所以でもある、
紺青の地に金色を散りばめる黄鉄鉱は、
かえって価値を高める存在として高く評価されています。
白い方解石の方は、一般に、
宝飾用途には邪魔者とされることが多いのですが、
わたしは、宙に浮かぶ白い雲の筋のようで、
なかなかこちらも魅力的だと思うのです。
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注意を要することとして、
宝石の本では、しばしば、
「青金石(lazurite)」と「天藍石(lazulite)」とが、
混同されて記載されていることです。
石灰岩の変成鉱床に生成する青金石と、
ペグマタイトの変成石英脈中に産する天藍石とでは、
産状も化学組成も違えば、その特性も異なります。
が、しかし、英語名と綴りまでがとてもよく似ており、
混乱されても不思議はないのかもしれません。
色合いも青金石の紺青と、
天藍石の藍色とは良く似ていて紛らわしいのです。
その上、どちらも装飾用に用いられるため、
しばしば混同されているのが現状のようです。
代表的な宝石学者や専門家すらも、
うっかりミスからか誤った記載をされているのですから・・・、
混乱を正すのは、なかなか難しいのかもしれませんね。
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人 類が手にした最も古い宝石の一つと考えられる、
ラピスラズリですが、
最古のものは、紀元前5000年、
シュメール王国の都市、エリドゥの寺院の隣の墓地から、
発掘された(1990年)、ラピスラズリのビーズが、
最も古い時代のものとされているそうです。
古代オリエントの各地や、
古代メソポタミアのシュメール第1王朝の都市ウルの出土品、
古代バビロニア王国時代、
エジプト第18王朝時代の出土品等などにも、
数多くのラピスラズリの装飾品や、
工芸品などが発見されています。
これら古代のラピスラズリは、すべて、
アフガニスタンの高い山の中、
ヒンドゥークシュ山の標高2700〜3400mの地にある、
鉱山で採掘されたものといわれています。
辺境の地から、道なき道や砂漠を越えて、
メソポタミア、エジプト、そして、遥かローマへ、
数千kmの道程を運ばれたということです。
それ程までにも、古来の人々は、
ラピスラズリに魅せられ、
その色、その神秘を愛してきたのでしょう。
日本の奈良の正倉院の宝物にも、
ラピスラズリの装飾品が保管されています。
中でも有名な、当時の最高級の装飾品の一種、
紺玉帯(こんぎょくのおび)というベルトも、
アフガニスタン原産のラピスラズリを加工して、
鋲留めされたものだそうです。
アフガニスタンから、
オリエントに運ばれた原石が加工され、
再びシルクロードを通って運ばれる・・・、石の旅。
なんだか気の遠くなりそうな、
遠大な道程、ひとつのロマンですね。
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5 世紀以降、
ラピスラズリは、ヨーロッパでは、
ウルトラマリン(ultramarinum:海の彼方)とも
呼ばれていました。
おそらく、「海の彼方、遠い異国からもたらされる貴重な宝石」という意味合いからきたのでしょう。
洋の東西を問わず、
宝飾品や工芸品としてだけではなく、
「最も素晴らしい、青の顔料」 とされ、
絵画の顔料としても珍重されてきた、
ラピスラズリ。
西洋、東洋の、有名無名の画家たちが、
こぞって、このラピスラズリの青を求め、
青を愛し、絵に描き残しました。
TVで見た、シルクロードのキジル千仏洞の仏画の、
ラピスラズリが、未だ印象に残っています。
さぞかし、高価な画材であった、
ラピスラズリの群青色、ウルトラマリンの美しさ。
それは、今もなお美しく、決して色あせない、
天上の青、至高のブルーなのです。
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産 地は、
アフガニスタン、アルゼンチン、ロシア、チリ、アメリカ、カナダ、ミャンマーなど。
アフガニスタンから産出されるものは、
深い青と黄鉄鋼の斑点がくっきりと現れており、
高品質なラピスラズリの産地として、現代でも有名です。
アルゼンチンでも、品質の高いものが産出されています。
ロシア産やチリ産のラピスラズリは、
青みが淡いものが多く、
アメリカ産のものは、色が濃く暗い青で、
カナダ産は、明るい青色が多いようです。
数種類の鉱物が混ざり合い、生み出された、
複雑な構成を持つ、
ラピスラズリならではのさまざまなバリエーションですね。
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実 は、ラピスラズリには、
多くのイミテーションや偽石もあるのです。
その代表的なものとして、
フランスのギルソン社がつくった、イミテーションがあります。
これは、粉末原料の焼結法で合成ラピスを製造する、
というもので、成分がほとんど変わらないため、
素人はおろか、
プロでも、一見判別がつかないほどなのだとか。
ただし、天然ラピスより硬度が低いのが難点なので、
天然ラピスより耐久性に劣るようです。
その他の、偽ラピスラズリとしては、
ハウライトというまったく別の石を青く染めた、
ハウライト・ラピス」や、
ジャスパーに、銅を練り込み瑠璃色の染料で着色したもの、
その他、さまざまな鉱物にを着色したものなどが出回っているようです。
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古 今東西、
ラピスラズリは、聖なる石として崇められ、
珍重されてきました。
古代エジプトでは、「神が宿る石と」信じられ、
ファラオや司祭など、
高位の者のみが身に着けられる、特別な石でもありました。
また、古代ローマ時代には、
「美の女神アフロディテの石」とされ、
恋人たちの愛や夢を守るといわれていました。
数多の薬効がささやかれ、
数々の、護符や装飾品として仕立てられた、
ラピスラズリは、
心の曇りや邪念、嫉妬、不安を取り除き、
幸運と成功をもたらすと言われています。
持ち主の内なるパワーを刺激して、
知恵、洞察力、決断力を高めてくれる、
といわれています。
また、視力回復、心臓の安定、甲状腺の正常化をもたらすパワーがあるとも伝えられてきました。
持ち主の吉運を大吉運に、
凶運を吉運に変える、
強いパワーを持つ石だといわれています。
持ち主と石の波長が合うと、
石の色は濃くなり、
災難が降りかかると灰色になるのだとか。
突然に紛失してしまったら、
「石が持ち主の身代わりとなり、
持ち主の災厄を持ち去ったのだ」といわれます。
不幸を幸福に変え、
不運を幸運に変えてしまうという、
ラピスラズリの不思議なパワーは、
水晶(クリスタル)と 同様に、
霊的波動の非常に強い石とされており、
宝石としてのみならず、パワー・ストーンとしても、
今なお、多くの人に愛されています。
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◆ お手入れ方法(使用上の注意)
傷つきやすく、薬品にも弱い、デリケートな宝石です。取り扱いには十分注意しましょう。
衝撃・薬品(除光液・塩素系洗剤など含む)・温泉などは、
大の苦手です!絶対に、避けてください!!!
汗・脂肪や化粧品類・ヘアスプレー・紫外線なども、できるだけ避けてください。
衝撃にも弱いので、超音波洗浄機などの使用も避けてください。
身に着けたあとは、必ず、柔らかい布かセーム皮などで優しく拭いてください。
汗をかいた後には、軽く水洗いし汚れを落として、よく乾燥させてから保管ください。
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◆ 保管方法
1. 硬いものとの接触を避けて、保管はひとつひとつ布でくるむか、小分けにして保管するのが望ましい方法です。
よく見かける『チャック付きビニールパック』などに小分けしてもいいでしょう(イヤリング、ピアスも片方ずつ入れる)。
2. 直射日光や強い照明の当たる場所での保管はいけません。
3. お手入れの後は、よく乾燥(自然乾燥)させてから保管ください。
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